【書を使う】人生の勝算 著:前田雄二
人生の勝算 著:前田雄二
■目次・概要
(目次)
- プロローグー経営はストリートから始まった
- 第1章:人は絆にお金を払う
- 第2章:SHOWROOMが作る新しいエンターテインメントのかたち
- 第3章:外資系銀行でも求められたのは「思いやり」
- 第4章:ニューヨーク奮闘記
- 第5章:SHOWROOM起業
- 第6章:SHOWROOMの未来
- エピローグーコンパスは持っているかー
(概要)
SHOWROOM株式会社を立ち上げた前田雄二さんの自伝のような本でした。
第1章や第2章のビジネスモデルの話については、各メディアで紹介されていた内容で、だいたい知ってはいました。
しかし、本人が書いたものを読むと、どうしてこのビジネスに人生を賭けようと思うに至ったかのプロセスが書かれていて、とても面白かったです。
全体的におもしろかったのですが、とくによかったのは、会社員時代から立ち上げ当時の話が書かれていた、3~5章でした。
僕は前職、新規事業の立ち上げを担当して、うまくいかなかった経験をしているので、読んでいていろいろ思うところがありました。
今でも、あの時こうやっていればよかったなと考えるのですが、今回この書籍を読んだことで、その解答が自分の中で出たのかなと思います。
以下は、面白かった点を抜粋しつつ、感想を書いていきます。
よろしくお願いします。
■SHOWROOMについて
SHOWROOMはアーティストやアイドル、タレント等の配信が無料で視聴でき、さらに誰でもすぐに生配信が可能な、双方向コミュニケーションの仮想ライブ空間のこと。
■コミュニティーが形成される5つエッセンスについて
下記の5つの要素が、合わさると強固なコミュニティーが形成されるとのこと。
- 余白があること
- クローズドの空間で常連客ができること
- 仮想敵を作ること
- 秘密やコンテクスト、共通言語を共有すること
- 共通目的やベクトルをもつこと
これらの5つの要素について、筆者のストリートミュージシャンとしての経験や、スナックのビジネスモデルを用いて説明されていました。
僕がこの5つのエッセンスの章を読んで、真っ先に思ったのは「ニコニコ動画って惜しかったんだなぁ」です。
僕は、あまりコメントする方ではなかったのですが、ニコニコ動画のおもしろいコメントを書いて動画を盛り上げようという雰囲気が好きでした。
ゲーム実況動画とかでは、お決まりのネタができて「常連客」が生まれたり、いわゆる「共通言語」ができるんですね。
これはこの書籍では「ファンを中の人化する」「共犯者を増やす」みたいな言葉で説明されていました。
その他にも「荒さ」、この本では「余白」と書かれている部分もニコニコ動画の魅力でした。
初音ミクが流行りだしたときは、とくにそれを感じてました。
当時の状況を一言でいうとカオス。
皆がこぞって曲を上げるのですが、正にいろんな角度からいろんな球がとんでくる状態でした。
「なんじゃ!?この曲は!」と思わず笑ってしまうような曲も多かったです。
今の方が絶対にレベルが高いことはわかっているのですが、2008年~2011年のあたりは、熱量というか、勢いがありました。
こんな感じでニコニコ動画は、1から4の要素は満たしていたのですが、ただ唯一「5.共通目的やベクトルをもつこと」だけがなかったのかなと思います。
SHOWROOMのギフティング(投げ銭みたいなもの)は「応援しているアイドルが有名になる」「飯のタネになって」のような明確なベネフィットがある。
基本的に匿名で活動するニコニコ動画は、それがないわけではないが、応援する意義をSHOWROOMほど感じられないのでしょう。
当時ニコニコ動画に、noteのような投げ銭システムがあったらどうなってたかなというのは時々考えるのですが、多分うまくいかなかっただろうなと思います。
ここまで考えて「SHOWROOMすげぇえええ」となりました。
最近見始めて、今はまだそこまで応援したい対象がいないのですが、見つかったら「前向きな課金」をしてしまいそうです。
■「仕事を覚えるよりも人に好かれる人間になれ!」
筆者が外資系投資銀行で働いているときに、すべての面で圧倒された上司から言われた言葉だそうです。
全編通じて1番驚きましたし、こころに残りました。
同じ本を読んだ方に「そこが1番!?」といわれないか心配ですが・・・。
少し失礼ですが、僕は「外資系」や「投資銀行」に対して、数字で物事を判断するイメージを持っていました。
だからこそ、外資系投資銀行でトップの人が「人に好かれること」を一番大事にしていることが印象に残りました。
人に好かれるためには人を好きにならないといけない。
こちらも印象に残りました。
人に好きになってもらうためには、まず自分が相手を好きにならなくてはならない。
当たり前ですが、自分はそれができているかを考えました。
自分は基本的には人が好きなので、問題ないと思うのですが、どんな時もそれを意識できるかというとわかりません。
「自分と関わりが薄い人にも」優しくできるか、「どんなときにも」実行できるか、これに関しては今後意識していきたいです。
■モチベーションはどんな仕事術にも勝る
自分が前職で、ものづくり企業を支援するWeb系の事業を立ち上げて失敗しています。
うまくいかなかった当時は、方法がわからず失敗したと思っていました。
ただこの本を読んで考えると、胆力というか、やる気の問題が原因だと考えなおしました。
もっといえば、モチベーションのすり合わせやビジョンの共有ができていなかったと思います。
本文中に「やる気」はすべてを超越する、という言葉がありました。
当時の自分も、頑張っていなかったわけではないと思います。
しかし、もっとモチベーションがあれば、もっとがむしゃらにいろいろな方法を試して正解にたどり着けたかもしれないと考えなおしました。
そのために、サービスの存在意義や、どういう風に成長させたいかをもっと話し合うべきだったと思います。
同じ過ちを繰り返さないように、自分は何のためにこの仕事をしているのか、自分はどうなりたいのかを常に考えるようにしたいです。
■最後に
おそらく各人にとっておもしろいと思う場所が違う本だと思います。
- 決めていることの強さという話
- 経験が足りない部分はストックではなくフローでカバーするという話
これらに関してもとてもおもしろかったので、ぜひとも読んでみてください。
「SHOWROOMのビジネスモデルの話」「筆者の社会人時代の話」「SHOWROOM立ち上げ秘話」いずれもおもしろいのでオススメです。